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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(あ)5038号 判決 1952年5月06日

本籍

朝鮮咸鏡南道元山府礼智町五六七番地

住居

宮崎県宮崎市外園町五番地

土工

黄琪源

大正一一年七月二八日生

右の者に対する強盗致傷被告事件について昭和二六年一〇月三一日福岡高等裁判所宮崎支部の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人坂本建之助の上告趣意並びに被告人の上告趣意及び昭和二七年二月八日附上願書と題する書面は、末尾添附の書面記載のとおりである。

弁護人坂本建之助の上告趣意第一、二点について。

所論は、事実誤認若しくは理由不備の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

同第三点について。

原審における国選弁護人選任の経過が所論のとおりであつても、弁護人は控訴趣意書補充書を提出し、原審公判廷に出頭の上異議なく被告人の控訴趣意書及び右補充書に基いて弁論をしているのであり、原判決もこの補充書に対し判断を加えているのである。従つて、原審が弁護権の行使を制限したことを前提とする論旨は、既にその前提において失当であるから論旨の理由のないこと明らかである。

被告人の上告趣意(前掲上願書と題する書面を含む)について。

憲法三七条一項にいわゆる公平な裁判所とは組織、構成において偏頗の虞れのない裁判所の裁判をいうのであつて、具体的事件について裁判所の処理の当、不当をいうものでないことは、当裁判所の判例とするところであるから、この点の論旨の理由のないこと明らかである。しかも原審は、所論の各書面の中、控訴趣意書並びに昭和二六年八月七日附上申書(八月九日附とあるは誤記と認める)については判断を加えているのであり、その余の書面は、第一審裁判所に提出されたもの若くは被告人出頭の原審公判廷で弁護人が控訴趣意として陳述していないのであるから、原判決がこれについて判断を与えなかつたことに違法はない。次に、憲法三七条三項違反の論旨については、前記坂本弁護人の上告論旨第三点について説明したとおりであつて、その理由のないこと明らかである。その余の論旨は、結局事実誤認若くは法令違反の主張であつて、適法な上告理由とならない。

なお論旨を仔細に検討し記録を精査しても、刑訴四一一条に該当する理由はない。

よつて、同四〇八条、一八一条、刑法二一条により、全裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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